6月26日、Vet Derm Tokyo主催の皮膚科セミナーに参加しました。
テーマは「アトピー性皮膚炎・アポキルによる治療戦略」です。
アトピー性皮膚炎とは、「生まれつきの体質(アトピー)を原因とする、慢性的な痒みを起こす皮膚炎」のことです。アトピー性皮膚炎という名前は、みなさんも一度は聞いたことがある疾患ではないでしょうか。この疾患、実は一筋縄ではいかない、とっても厄介なものなのです。
これには、理由が2つあります
① 「この子はアトピー性皮膚炎です!」と診断するのが、簡単ではない
② 診断できても、治療管理が簡単ではない
1.アトピー性皮膚炎の診断
アトピー性皮膚炎は、「他疾患の除外」により診断されます。痒さを伴う皮膚病はアトピー性皮膚炎以外にも複数存在します。それらをひとつずつ除外(試験的治療を実施)し、それでも症状に改善がなければ、はじめてアトピー性皮膚炎と診断されるのです。この除外診断、食事アレルギーを除外するための除去食試験というものを含めると、2ヶ月以上もかかることがあります。「なんてまわりくどい!!」と思われますよね。
2.アトピー性皮膚炎の治療
やっとアトピー性皮膚炎と診断されても、治療がまた簡単ではありません。アトピー性皮膚炎は残念ながら完治しません。このため、長期的に治療を継続せねばなりません。
治療薬の第一選択として、経口ステロイド剤が選択されます。投与後の即効性に優れたとてもいいお薬で、短期的に服用する限りは大きな問題は起こりにくいですが、長期的に服用することで、肝臓への負担・筋力の低下・副腎ホルモン産生異常を招くリスクを伴うため、繊細な用量管理や定期的な血液検査が必要となる場合があります。
長期的なステロイド服用による負担を軽減するため、様々な治療が提唱されていますが(シクロスポリン療法、インターフェロン療法、減感作療法など)、いずれも効果の発現がゆっくりである・薬剤費が高いなどの難点があります。
このように、診断も治療も悩ましい犬アトピー性皮膚炎ですが、この度新しい治療薬として、オクラシチニブ(アポキル®)という経口剤の販売が開始されました。
このお薬は、皮膚の痒さを発生させる物質(インターロイキン31)のシグナル伝達を阻害することで痒さを軽減させます。経口ステロイド剤と同等の効果を有し、かつ、有害事象が軽微であるというメリットがあります。
今回参加したセミナーでは、特にこの新薬(アポキル)の使用方法について、詳細に学ばせていただきました。
紹介された学術情報・治験例によると、副作用の少ない、とてもいい治療薬のようです。講演にて紹介していただいた情報に加えて、この後も追加されるアポキルの治療報告を随時確認しながら、アトピー性皮膚炎の治療に役立てていきたいと思います。